技術資料

Restek 分析証明書(CoA)の不確かさ|保存・輸送条件を解説

20 Jan 2021

Restekの分析証明書(CoA)には、リファレンススタンダードの組成、適切な保存条件、および配送方法を理解するための情報が網羅されています。分析によっては「不確かさ」の値が必要になる場合もあり、CoAにはその値も記載されています。

2022年11月より、Restekはリファレンススタンダードの包装、ラベル、および分析証明書を順次リニューアルしています。製造工程、QC(品質管理)方法、ISO認定、認証標準物質(CRM)の指定、アンプル、標準溶液の組成自体には変更はありません。ただし、このリニューアルに伴い、分析証明書の外観と記載内容には変更が加えられています。

Restekのリファレンススタンダードは、化合物の安定性を最適化するように調製されているため、多くの製品で長い保存期間が実現しています。そのため、このリニューアル以前に製造されたリファレンススタンダードをお持ちの場合、CoAは旧バージョンとなっている可能性があります。また、在庫品は保存期間が長いため、現在から2023年までの間に新たにご注文いただいた標準溶液についても、旧バージョンのCoAが付属している場合があります。

本記事は、CoAの旧バージョンと新バージョンに合わせて2つのセクションで構成されています。

  • お使いの標準溶液が2022年11月21日より後に製造されたものである場合は、新バージョンのCoAが適用されます。こちらのセクションをご参照ください。
  • お使いの標準溶液が2022年11月21日以前に製造されたものである場合は、旧バージョンのCoAが適用されます。こちらのセクションをご参照ください。

RestekのCoAにおける不確かさについて

※対象:2022年11月21日より後に製造された標準溶液

リファレンススタンダードにおける「不確かさ(Uncertainty)」とは、標準溶液の品質を示す定量的な指標です。製品に生じ得る誤差の範囲を示すために用いられます。ただし、分析結果に不確かさの提示が求められない場合は、CoAに記載された不確かさの値を使用する必要はありません。

Expanded Uncertainty(拡張不確かさ)

CoAの表内には「Certified Values(保証値)」という項目があり、その中に「Expanded Uncertainty(拡張不確かさ)」が記載されています(Figure 1)。これらの値が「保証値」と呼ばれるのは、ISO認定に準拠して不確かさが算出・記載された状態で標準溶液が製造されているためです。分析結果に不確かさの提示が求められる場合は、この「Expanded Uncertainty」の値を使用します。

Figure 1: Cannabinoids Acids 7 混合標準溶液(cat.# 34144)の分析証明書からの抜粋です。この例では、最初に溶出する化合物であるCBDVAの「Expanded Uncertainty」の値は±25.2543 μg/mLです。

figure article GNAR3428A 01a

CoAに記載されているExpanded Uncertaintyの値は、Gravimetric(重量分析)、Homogeneity(均一性)、Storage(保存)、Shipping(輸送)という4つの不確かさの要素から算出されます。

Gravimetric(重量分析):標準溶液の調製工程で生じる不確かさを評価します。天秤の不確かさ、容量計・ピペットの不確かさ、純度の不確かさが含まれます。

Homogeneity(均一性):同一バッチのアンプル間で品質が均一かどうかを評価します。例えば、1 mLの溶液を50本のアンプルに分注した場合、各アンプルの化合物濃度が同じであるかを確認します。

Storage Stability(保存安定性):製造初日からラベルに記載の有効期限まで、標準溶液の濃度が変化しないかを評価します。

Shipping Stability(輸送安定性):輸送中に標準溶液が受ける条件を評価します。

Figure 2

figure article GNAR3428A 02

Figure 2は、この4つの要素からExpanded Uncertaintyの値が決定される仕組みを示しています。簡略化すると、以下のように考えることができます。

Expanded Uncertainty(拡張不確かさ) = Gravimetric Uncertainty(重量分析による不確かさ) + Homogeneity Uncertainty(均一性による不確かさ) + Storage Uncertainty(保存による不確かさ) + Shipping Uncertainty(輸送による不確かさ)

CoAに記載されているExpanded Uncertaintyの値は、実際には以下の計算式を用いて算出されています。

equation article GNAR3428A 01

ここで「k」はCoverage Factor(包含係数)であり、値は2です。これにより、約95%の信頼水準が得られます。

Note:この計算式はCoAに記載されていますが、ご自身で計算式を適用する必要はありません。Expanded Uncertaintyの値がどのように算出されたかを示すために掲載しています。

保存条件と輸送条件(Storage and Shipping Conditions)

CoAには、標準溶液の保存条件と輸送条件に関する情報も記載されています。

Storage(保存条件)

Storageの項目は、不確かさ、濃度、有効期限を保証するために、製品を受け取った後に保存すべき温度を示しています。Restekからお客様への配送中に、この温度以下を維持する必要があるという意味ではありません。

Shipping(輸送条件)

Shippingの項目は、安定性を維持できる配送時の包装条件を示しています。Restekのリファレンススタンダードのうち、約98%は「Ambient(室温)」条件での配送でも安定性が保たれます。残りの2%については「On ice(保冷)」による包装が必要です。

配送に7日以上を要し、輸送中に極端な温度条件にさらされた可能性がある場合は、Restekテクニカルサービスにお問い合わせのうえ、対応方法をご確認ください。

本記事が、Restekのリファレンススタンダードにおける不確かさ、保存条件、輸送条件への理解を深める一助となれば幸いです。ご不明な点がございましたら、 よくある質問(FAQ): Reference Standard)をご確認いただくか、Restekテクニカルサービスまでお問い合わせください。

Restekのリファレンススタンダード分析証明書について:不確かさ・保存条件・輸送条件

※対象:2022年11月21日以前に製造された標準溶液

RestekのCoAには、リファレンススタンダードの組成、適切な保存条件、配送方法を理解するための情報が網羅されています。分析によっては「不確かさ(Uncertainty)」の値が必要になるため、CoAには「Expanded Uncertainty(拡張不確かさ)」を含む「Certified Values(保証値)」を記載しています。本記事では、これらの用語を説明し、不確かさの値をいつ適用すべきか、またなぜこの値を提供しているのかを解説します。さらに、保存条件と輸送条件の違いや、標準溶液の品質を長期的に維持するために留意すべき点についても説明します。

Uncertainty(不確かさ)

リファレンススタンダードにおける「不確かさ」とは、標準溶液の品質を示す定量的な指標です。製品に生じ得る誤差の範囲を示すために用いられます。

ただし、分析結果に不確かさの提示が求められない場合は、CoAに記載された不確かさの値を使用する必要はありません。

Certified Values(保証値)

CoAには「Certified Values」という表があります。これらの値が「保証値」と呼ばれるのは、ISO認定に準拠して不確かさが算出・記載された状態で標準溶液が製造されているためです。Certified Valuesには、標準溶液のGravimetric Concentration(重量分析濃度)とExpanded Uncertainty(拡張不確かさ)が含まれます(Figure 3)。

Figure 3: LC Multiresidue Pesticide Standard #5(cat.# 31976)のCertificate of Analysisからの抜粋です。この例では、最初に溶出する化合物であるチアベンダゾールのCertified Valuesに注目します。

figure article GNAR3428A 03

Gravimetric Concentration(重量分析濃度)

この値は、アンプル中の化合物の実際の濃度を示しています。

上記の化合物の場合、Gravimetric Concentrationは100.0 µg/mLです。

多くのお客様は、分析にGravimetric Concentrationのみを使用しています。分析結果に不確かさの使用・提示が求められない場合は、以下のExpanded Uncertaintyに関するセクションを読み飛ばし、Homogeneity(均一性)、Storage(保存)、Shipping(輸送)のセクションへお進みください。

Expanded Uncertainty(拡張不確かさ)

Expanded Uncertaintyは、Gravimetric Concentrationをさらに詳しく見たものであり、アンプルに生じ得るいくつかの不確かさを詳細に示しています。分析結果に不確かさの提示が求められる場合は、これらの値が必要になります。

CoAに記載しているExpanded Uncertaintyの要素は、以下の3つです。

  • Gravimetric(重量分析)
  • Unstressed(ストレスのない)
  • Stressed(ストレスのある)

Gravimetric Expanded Uncertainty(重量分析による拡張不確かさ)

この値には、標準溶液の調製工程で生じるすべての不確かさが含まれます。天秤の不確かさ、容量計・ピペットの不確かさ、純度の不確かさが含まれます。

上記の化合物の場合、Gravimetric Uncertaintyは±0.7091 µg/mLです。

Unstressed Expanded Uncertainty(ストレスのない拡張不確かさ)

この値は、標準条件下でのRestekからラボまでの輸送(詳細は後述)を含め、リファレンススタンダードに存在する不確かさを統合したものです。

Unstressed Expanded Uncertainty = Gravimetric Uncertainty + Homogeneity Uncertainty + Storage Uncertainty

上記の化合物の場合、Unstressed Expanded Uncertaintyは±4.6114 µg/mLです。

Stressed Expanded Uncertainty(ストレスのある拡張不確かさ)

この値(Combined Stressed Uncertaintyとも呼ばれます)は、非標準条件下でのRestekからラボまでの輸送(詳細は後述)を含め、リファレンススタンダードに存在する不確かさを示しています。

Stressed Expanded Uncertainty = Gravimetric Uncertainty + Homogeneity Uncertainty + Storage Uncertainty + Shipping Uncertainty

上記の化合物の場合、Stressed Uncertaintyは±4.7285 µg/mLです。

補足として、CoAにはStressed Expanded Uncertaintyの算出に用いた計算式も記載しています。

equation article GNAR3428A 01

ここで「k」はCoverage Factor(包含係数)であり、値は2です。これにより、約95%の信頼水準が得られます。

Note:この計算式をご自身で適用する必要はありません。CoAには不確かさの値をすでに記載しています。Combined Stressed Uncertaintyがどのように算出されたかを示すために、計算式を掲載しています。

Homogeneity(均一性)、Storage(保存)、Shipping(輸送)

Gravimetric Expanded Uncertaintyの要因に加え、Unstressed Expanded UncertaintyとStressed Expanded Uncertaintyには、以下の要因も含まれます。

  • Homogeneity(均一性): 同一バッチのアンプル間で品質が均一かどうかを確認します。例えば、1 mLの溶液を50本のアンプルに分注した場合、各アンプルの化合物濃度が同じであるかを確認します。
  • Storage(保存): 製造初日からラベルに記載の有効期限まで、標準溶液の濃度が変化しないかを確認します。
  • Shipping(輸送)(Stressed Uncertaintyにのみ適用): 輸送中に標準溶液が経験する最悪の条件を評価します。具体的には、アンプルが経験する最高温度と、その温度が継続した時間を確認します。これにより、配送前後で標準溶液の品質が保たれているかを評価します。

Figure 4:Gravimetric ConcentrationとGravimetric Uncertainty、Unstressed Uncertainty、Stressed Uncertaintyの関係を示しています。

Figure 4:

figure article GNAR3428A 04

Storage Conditions(保存条件)とShipping Conditions(輸送条件)の違い

標準溶液の不確かさを判断するには、CoAに記載されているStorage ConditionsとShipping Conditionsの違いを理解することが役立ちます(Figure 5)。

Figure 5: LC Multiresidue Pesticide Standard #5(cat.# 31976)のCoAには、Storage ConditionsとShipping Conditionsの両方の項目があります。

figure article GNAR3428A 05

Storage(保存条件)

Storageの項目は、不確かさ、濃度、有効期限を保証するために、製品を受け取った後に保存すべき温度を示しています。Restekからお客様への配送中に、この温度以下を維持する必要があるという意味ではありません。

Shipping(輸送条件)

Shippingの項目は、安定性を維持できる配送時の包装条件を示しています。Restekのリファレンススタンダードのうち、約98%は「Ambient(室温)」条件での配送でも安定性が保たれます。残りの2%については「On ice(保冷)」による包装が必要です。この項目に選択肢はこの2つのみです。

Restekのリファレンススタンダードは、一定期間にわたる極端な温度条件下での試験を実施しています。ただし、こうした極端な条件を実際の輸送中に経験するアンプルはほとんどありません(Table I)。

Table I: すべてのCoAに記載されている表で、標準溶液のLabel Conditions(ラベル記載条件)、Standard Conditions(標準輸送条件)、Nonstandard Conditions(非標準輸送条件)を示しています。

ラベル記載条件標準輸送条件非標準輸送条件
25 °C 標準(室温)60°C未満60°C以上、最大7日間
10 °C以下(冷蔵)40°C未満40°C以上、最大7日間
0°C以下(冷凍)/−20°C以下(ディープフリーザー)25°C未満25°C以上、最大7日間

Standard Shipping Conditions(標準輸送条件)

標準輸送条件で標準溶液を受け取った場合は、Unstressed Uncertainty(ストレスのない不確かさ)の値を適用します。

今回の例の標準溶液は、ラベル記載条件が10°C以下です。標準的な温度条件下では、40°Cまでの温度を経験する可能性がありますが、悪影響は生じないと想定されます。

Nonstandard Shipping Conditions(非標準輸送条件)

非標準輸送条件で標準溶液を受け取った場合は、Stressed Uncertainty(ストレスのある不確かさ)の値を適用します。

今回の例の標準溶液は、ラベル記載条件が10°C以下です。非標準的な温度条件下では、40°C以上の温度を最大7日間経験する可能性がありますが、悪影響は生じないと想定されます。

Standard Shipping ConditionsとNonstandard Shipping Conditionsの違い

これまでの実績から、輸送中に標準溶液が極端な温度に継続的にさらされることは非常に稀です。そのため、標準溶液の不確かさを算出する際に、Nonstandard Shipping Conditionsを適用する必要があるケースはほとんどありません。

配送に7日以上を要し、非標準の温度条件を超えた可能性がある場合は、Restekテクニカルサービスにお問い合わせのうえ、対応方法をご確認ください。

本記事が、Restekの認証リファレンススタンダードにおける不確かさ、保存条件、輸送条件への理解を深める一助となれば幸いです。ご不明な点がございましたら、Reference Standard FAQをご確認いただくか、Restekテクニカルサービスまでお問い合わせください。

まとめ

  • CoAの「不確かさ」は標準溶液の品質を示す定量的な指標で、分析結果に不確かさの提示が求められる場合にのみ使用する
  • 2022年11月21日を境に、CoAのフォーマットが新バージョンと旧バージョンに分かれている(製造工程・品質・組成に変更はない)
  • 新バージョンでは「Expanded Uncertainty」、旧バージョンでは「Unstressed/Stressed Expanded Uncertainty」を輸送条件に応じて使い分ける
  • Storage(保存条件)とShipping(輸送条件)は異なる項目であり、輸送中の温度は保存温度と同一である必要はない
  • 約98%の標準溶液はAmbient(室温)配送で安定性が保たれ、残り2%のみOn ice(保冷)が必要
  • 配送に7日以上を要し、極端な温度条件にさらされた可能性がある場合はRestekテクニカルサービスに問い合わせる

この記事で紹介した製品:

Catalog No. 31976 — LC Multiresidue Pesticide Standard #5 Organonitrogen Compounds、100 µg/mL、アセトニトリル、1 mL/アンプル(製品情報を見る

Catalog No. 34144 — Cannabinoids Acids 7 Standard、1000 µg/mL、アセトニトリル(1% DIPEA、0.05%アスコルビン酸含有)、1 mL/アンプル(製品情報を見る

よくある質問

CoAに記載されている「不確かさ」は必ず使用する必要がありますか?

いいえ。分析結果に不確かさの提示が求められない場合は、CoAに記載された不確かさの値を使用する必要はありません。多くのお客様はGravimetric Concentration(重量分析濃度)のみを使用しています。

StorageとShippingの違いは何ですか?

Storageは製品を受け取った後に保存すべき温度、Shippingは配送時に安定性を維持できる包装条件を指します。配送中に必ずStorageの温度以下を維持しなければならないという意味ではありません。

Unstressed Uncertainty(ストレスのない不確かさ)とStressed Uncertainty(ストレスのある不確かさ)はどのように使い分けますか?

標準輸送条件(Standard Conditions)で受け取った場合はUnstressed Uncertaintyを、非標準輸送条件(Nonstandard Conditions)で受け取った場合はStressed Uncertaintyを適用します。実際には非標準輸送条件に該当するケースは非常に稀です。

お使いのCoAが新旧どちらのバージョンか分からない場合はどうすればよいですか?

標準溶液が2022年11月21日より後に製造されたものであれば新バージョン、それ以前に製造されたものであれば旧バージョンのCoAが適用されます。ご不明な場合はRestekテクニカルサービスにお問い合わせください。


この記事で紹介した製品


LC Multiresidue Pesticide Standard #5 Organonitrogen Compounds, 100 µg/mL, Acetonitrile, 1 mL/ampul
Cannabinoids Acids 7 Standard, 1000 µg/mL, Acetonitrile with 1% DIPEA and 0.05% Ascorbic Acid, 1 mL/ampul
GNAR3428-JA
バージョン A