技術資料

水注入に強いWAXカラムは?ーRtx-Waxカラムを用いた水中のグリコール分析ー

15 Oct 2020

feature EVAR3086

はじめに

グリコールは飛行機などの滑走路の除氷から油圧破砕作業まで、非常に幅広い用途に利用されています。グリコールはさまざまな産業において、一般的に使用される化学物質であり、化学系ラボおよび環境ラボなどで残留検査が実施されています。しかし、この分析でもっとも頻繁に用いられるGCサンプル導入方法は、水溶液の直接注入ですが、この場合、分析カラムと注入口ライナーに大きな負担がかかります。なお、この水注入(水溶液注入)に最適なカラムは、一般的にポリエチレングリコール(PEG)固定相が採用されていますが、PEGは独自の選択制を備える高極性固定相であり、水溶媒との新世話性が高いことが知られています。ここでは、様々なベンダーのPEGカラムで、エチレングリコール(EG)およびプロピレングリコール(PG)水溶液のレスポンスを、最適化した条件で評価しました。

本記事では、Rtx-Waxの特徴と利点についてご紹介していきます。

【目次】

  • Rtx-Waxを用いた本分析の特徴
  • ベンチマーキング
  • 分析結果
  • 直線性
  • 耐久性
  • ブリード
  • Rtx-Waxを用いた本分析の結論

Rtx-Waxを用いた本分析の特徴

  • 高い耐久性があり、繰り返しの水注入に耐えることができます。
  • 600回の水注入後も対称なピーク形状を維持できます。
  • 低ブリードで、最小0.5 ngのグリコールを正確な検出ができます。

 ベンチマーキング

今回の分析・研究では、スプリット注入を使用し、3つの異なるカラムで直線性、耐久性、およびブリードについて評価しました。最適化したスプリット注入法の詳細は、アプリケーションノートEVAN2873で詳しく説明しています。

  • Restekカラム
    • Rtx-Wax(cat.# 12455)
  • Restek以外のカラム
    • カラムA
    • カラムB

この研究で水中のグリコールを分析に使用したすべてのカラムは新品で、30 m、0.53 mm、1.0 µmです。それらはすべて、ラベルに記載された最高使用温度で1時間のコンディショニングをおこないました。

分析結果

水中のグリコール分析に関するベンチマーキング研究の結果は、Table Iにまとめられ、以下で詳細に論じています。

Table I: カラムのベンチマーキング結果

カラム寿命直線性ブリード
通過した注入 *ピークの対称性 (最終注入)最終 r2240℃でのFID反応 (pA)
EGPGEGPG
 6000.990.920.99990.999929
カラムAキャリブレーションの下限が満たされなかったため、耐久性試験は実施されませんでした53
カラムBキャリブレーションの下限が満たされなかったため、耐久性試験は実施されませんでした60

*実験は、ピーク対称性 (ChemStation ソフトウェアを使用して決定された値) が 0.5 未満に低下するか、または注入回数が 600 回に達するまで、どちらか早い方まで繰り返すように設計されました。すべての注入はオンカラムで1 ngです。

直線性

各カラムについて、水中のグリコール分析に適した直線性を確立し、異なる濃度でピーク形状を評価するために、オンカラムで0.5 ngから100 ngのの初期検量線を作成しました。 検量線の最も低い2つのレベル、0.5および1.0 ngのオンカラムでは、カラムブリードが高くEGとPGを検出することができなかったため、競合他社のカラムAおよびBは直線性と耐久性の実験から除外しました。
 
それに対し、Rtx-WaxカラムではEGとPGの両方で優れた直線性が得られました(Figure 1およびFigure 2)。 水がカラムへ潜在的にダメージを与える可能性があるスプリットレス注入で600回もの水注入という厳しい条件下においても、Rtx-Waxカラムは容易くキャリブレーションのチェックを満たすことができました。 なお、低ブリード特性のカラムの結果として、EGとPGの低濃度での高いレスポンスは、キャリブレーション範囲全体で優れた直線性を得る一因となります。

Figure 1: Rtx-Waxカラムは600回の水注入後でも、プロピレングリコール(0.5–100 ngオンカラム)分析において検量線の直線性が得られました。
figure-article-EVAR3086-01.jpg
Figure 2: Rtx-Waxカラムは600回の水注入後でも、エチレングリコール(0.5–100 ngオンカラム)分析において検量線の直線性が得られました。
figure-article-EVAR3086-02.jpg

耐久性

Rtx-Waxカラムの耐久性試験は、水を10回( 1 µL スプリットレス)注入した後に、50µg/mLグリコール標準液( 50:1 スプリット注入、オンカラム量 1 ng)を注入しました。 実験は、ピーク対称性 (ChemStation ソフトウェアを使用して決定された値) が 0.5 未満に低下するか、または注入回数が 600 回に達するまで、どちらか早い方まで繰り返すように設計されました。 Figure 3に示したように、Rtx-Waxカラムは600回の注入後でも優れたピーク形状を維持しました。 実際のところ、Rtx-Waxカラムは拡張耐久性実験で1600回以上の水注入に耐え、最後の実験でもピーク対称性が0.9を上回っていました。

Figure 3: Rtx-Waxカラムのプロピレングリコールとエチレングリコールのピーク形状および保持時間は、600回の水注入後も変わりません(ピークリストと分析条件を含む完全版はPDFでダウンロード可)。
Comparison of Glycols Before and After 600 Water Injections on Rtx-Wax

GC_EV1454

ブリード

水中のグリコールの分析におけるPEGカラム評価の最終テストは、ブリード実験です。 3つのカラムすべてを一般的な最高使用温度である240°Cまで昇温しました。 最終のブリード測定では、Rtx-Waxが最も低いブリードを示す結果となりました(Table IFigure 4)。 ただし、Rtx-Waxの最高使用温度は、これよりも高い(250°C)ため、より高い温度が必要な場合でも安心して使用することができます。 なお、カラムブリードが低いため、分析対象物の濃度が低い場合でも感度が向上します。

Figure 4: Rtx-Waxカラムは、検証されたカラムの中で最も低いブリードを示し、最高使用温度(競合他社カラムは240°C、Rtx-Waxカラムは250°C)でも低いままでした(ピークリストと分析条件を含む完全版はPDFでダウンロード可)。
Rtx-Wax Bleed Profile Comparison

GC_EV1456

結論

この研究で評価したポリエチレングリコールベースのカラムの中で、Rtx-Waxは直線性、耐久性、およびブリードの面で最も優れた性能を発揮し、600回の水注入という過酷な条件後でも、初めの注入と同様に優れた性能を発揮しました。

この点において、Rtx-Waxは、水中のグリコール分析において頑丈で信頼性のあるソリューションと言えるでしょう。

Products Mentioned


Rtx-Wax GCキャピラリーカラム, 30 m, 0.53 mm ID, 1.00 µm

Authors

  • Corby Hilliard

    Corby Hilliard started his Restek career in the Quality Assurance department where he spent his first seven years as a QA analyst and worked his way up to a senior QA analyst. He then moved on to the Innovations department in 2009 as a GC Solutions Advanced Scientist. His experience is predominately in gas chromatography (GC) using various detectors and mass spectrometry as well as troubleshooting and method development. His primary work for Restek is generating product application data, using new and existing products in food safety, petrochemical, environmental, and the GC accessories line. He also is involved with quality and R&D as well as new product development.

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  • Chris English

    Since 2004, Chris has managed a team of chemists in Restek's innovations laboratory who perform new product testing, method development, and applications work. Before taking the reins of our lab, he spent seven years as an environmental chemist and was critical to the development of Restek’s current line of volatile GC columns. Prior to joining Restek, he operated a variety of gas chromatographic detectors conducting method development and sample analysis. Chris holds a BS in environmental science from Saint Michael's College.

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