技術資料

カシューナッツアレルゲン表示義務化 対応ガイド

消費者庁が2026年4月1日付で公表した公定検査法において、 LC-MS/MS確認試験法(NH法)の公定法記載カラムとして Raptor Inert ARC-18が正式に明記されました。 科学的根拠に基づき、3つの公定法を解説します。

20 Apr 2026

【公定検査法 公表済み】
消費者庁は2026年4月1日付で「アレルゲンを含む食品の検査方法」を最終改正・公表しました。
カシューナッツは特定原材料9品目目に追加され、LC-MS/MS確認試験法(NH法)に
Raptor Inert ARC-18(Restek社製)が公定法記載カラムとして明記されています。
消費者庁ウェブサイトで確認

9品目
特定原材料
(義務表示)の数
出典:[1]
10 µg/g
スクリーニング
陽性判定閾値
出典:[1]
69%
カシュー/ピスタチオ
主要アレルゲン配列一致率
出典:[3]
3法
公定LC-MS/MS
確認試験法の数
出典:[1]
2年間
経過措置期間
〜2028年3月31日
出典:[1]

規制スケジュール

カシューナッツ アレルギー表示義務化の経緯

  • 2025年
    1月
    第7回アドバイザー会議 — 義務化方針の決定完了
    カシューナッツを「特定原材料に準ずるもの」から「特定原材料」(義務表示)へ移行する方針を発表。ピスタチオの推奨表示品目追加も決定。公定検査法確立を条件とした。
  • 2025年
    12月
    第8回アドバイザー会議 — 検査法バリデーション完了完了
    ELISA法・リアルタイムPCR法・PCR-核酸クロマト法・LC-MS/MS法の全検査法について、国内10〜17機関による試験室間バリデーションが完了。次長通知基準を満たすことを確認。食品表示基準改正案を確定。
    出典:[2]
  • 2026年
    4月1日
    食品表示基準改正・公定検査法 公表✓ 施行済み
    消費者庁が食品表示基準を改正し、カシューナッツを特定原材料9品目目に追加。「アレルゲンを含む食品の検査方法」を最終改正・公表。LC-MS/MS確認試験法(NH法)にRaptor Inert ARC-18が公定法記載カラムとして明記された。
    出典:[1]
  • 公布後
    2年以内
    経過措置終了(2028年3月31日)→ 完全施行(2028年4月1日)
    2028年3月31日をもって経過措置期間終了。2028年4月1日以降に製造・加工・輸入される加工食品は新表示が義務。違反は食品表示法違反となる。(根拠:内閣府令第34号 第2条)
    出典:[1]

公定検査プロトコル

2段階検査フロー

消費者庁公定検査法は、既存の特定原材料8品目と同一の2段階方式を採用しています。[1]

第1段階 / 定量検査(スクリーニング)

ELISA法
抗原抗体反応を利用し、カシューナッツ由来タンパク質を定量的に検出。
試験室間バリデーション(10機関以上)で基準を満たすことが確認されている。
10 µg/g 以上 → 確認検査へ
第2段階 / 定性検査(確認)

LC-MS/MS法 / PCR法
LC-MS/MS法(NH法・NS法・HF法):種特異的トリプシン/キモトリプシン消化ペプチドを標的にMRM検出。カシューナッツとピスタチオを分子レベルで識別。

PCR法(リアルタイムPCR・PCR-核酸クロマト):種特異的DNA配列を増幅して検出。

なぜLC-MS/MSが確認試験法に採用されたのか。カシューナッツとピスタチオの交差反応性
カシューナッツ
Anacardium occidentale
ウルシ科(Anacardiaceae)
69%

主要アレルゲン(2Sアルブミン)
アミノ酸配列一致率
ピスタチオ
Pistacia vera
ウルシ科(Anacardiaceae)
両者は同じウルシ科に属し、主要アレルゲン(2Sアルブミン)のアミノ酸配列に約69%の相同性が認められます。この高い類似性ゆえに、ELISA法(抗原抗体反応)では抗原抗体反応による交差反応が起きやすく、両者を完全に区別することが困難で、偽陽性リスクがあること知られていました。
これに対し、LC-MS/MSは種特異的なペプチド配列をMRMモードで検出することで、分子レベルでの識別を実現しています。この種特性が、本手法を確認試験として採用する技術的根拠となっています。
出典:消費者庁 第7回食物アレルギー表示アドバイザー会議資料(2025年1月21日)[3]

公定LC-MS/MS確認試験法

3つの公定法セットの比較

消費者庁公定検査法では、LC-MS/MS確認試験法として独立した3法セットが規定されています。
各法は前処理・測定・判定が一体化したセットであり、検査機関はいずれか1法を選択して実施します。[1]

項目 NH法 NS法 HF法
正式名称 内標準非添加・
シグナルノイズ比判定
2段階内標準
相対比判定
1段階内標準
相対比判定
前処理法 pNH法 pNS法 pHF法
試料採取量 2 g 1 g 1 g
抽出条件 37℃、1時間振とう
(尿素・チオ尿素・DTT)
沸騰水浴、10分
(APEX Reagents)
室温、一晩振とう
(ExSta=ELISA用と同一)
消化酵素 トリプシン トリプシン キモトリプシン
固相抽出(SPE) 陽イオン交換のみ C18 + 陰イオン交換による二段階精製 陽イオン交換 + 陰イオン交換による二段階精製
公定法記載カラム Raptor Inert ARC-18

2.7 µm, 3.0×100 mm(Restek)
メタルフリー C18カラム3 µm, 2.1×100 mm ミックスモード C18カラム

3 µm, 3.0×150 mm
ガードカラム 記載なし(不要) 記載あり

カートリッジカラム
3 µm, 2.1×10 mm
記載なし(不要)
流速 0.4 mL/min 0.3 mL/min 0.3 mL/min
移動相 A: 0.2%酢酸水
B: 0.2%酢酸/ACN
A: 0.2%酢酸水
B: 0.2%酢酸/ACN
A: 0.1%ギ酸水
B: 0.1%ギ酸/ACN
カラム温度 50℃ 50℃ 50℃
内標準(IS) 不要 安定同位体標識
ペプチド(2種)
安定同位体標識
ペプチド+外標準
陽性判定基準 全MRMトランジションの
S/N比 ≥ 10
IS対比面積比 ≥ 1/10
(各トランジション)
外標準IS対比面積比 ≥ 1/10
(各トランジション)
ELISA用抽出液
との共用
不可(別途調製) 不可(別途調製) 可能
(ExStaを共用)

出典:消費者庁「アレルゲンを含む食品の検査方法」最終改正2026年4月1日 [1]。”又は同等の結果が得られるものを用いる”の規定により、各法とも同等性が証明された代替カラムの使用が認められています。

分析法選択のアドバイス
食品の加工度やマトリックスに適した前処理法を選択することをお勧めします。NH法の前処理であるpNH法は尿素・チオ尿素・DTTを含む変性剤による化学的抽出が特徴で、たんぱく質が凝集・変性してしまった試料(例:焼成菓子、スナック、ソース類)でも回収率が安定しやすい傾向があります。NH法を基本条件とすることも可能ですが、回収率が悪い場合などは他の条件を補助的に使用することも検討してください。

条件 抽出方法 酵素 前処理強度 適した試料
pNH法 化学変性 トリプシン ★★★(強) 高度加工・難溶性(クッキー・チョコ)
pNS法 熱変性 トリプシン ★★(中間) 焙煎・ペースト・中加工
pHF法 室温抽出 キモトリプシン ★(穏やか) 粉末・素焼き

HF法とELISA検査の連続性:
HF法の前処理(pHF法)は、公定ELISA定量検査(第1段階スクリーニング)と同一の抽出液「特定原材料抽出液 ExSta」を使用します。これにより、ELISA検査と同一の抽出バッチから確認試験用試料を調製することが可能です。すでにELISAによる食品アレルゲン検査を実施しているラボにとって、LC-MS/MS確認試験の導入障壁が低いプロコルです。ただし、加工度の高い試料で期待する回収率が得られない場合は、pNH法なども検討してください。

公定法記載カラム

Raptor Inert ARC-18

消費者庁公定検査法(NH法)においてLC-MS/MS確認試験の公定法記載カラムとして明記された、食品アレルゲン分析対応UHPLCカラム。

消費者庁公定法(NH法)記載カラム
【公定法への記載】
消費者庁「アレルゲンを含む食品の検査方法」(最終改正:2026年4月1日)第2.2.6.4.2.1項において、
LC-MS/MS確認試験法(NH法)の分析カラムとして以下の通り明記されています。「オクタデシルシリル化シリカゲルカラムは、Raptor Inert ARC-18 2.7 µm, 3.0×100 mm(Restek社製)又は同等の結果が得られるものを用いる」

出典:消費者庁「アレルゲンを含む食品の検査方法」最終改正2026年4月1日 [1]

製品仕様

粒子タイプ
2.7 µm SPPコアシェルシリカ
サイズ(公定法記載品)
3.0 mm ID × 100 mm
リガンドタイプ
立体保護C18(ステリカリープロテクテッド)
エンドキャップ
なし
ポアサイズ / 炭素含有量
90 Å / 7%
表面積
130 m²/g
pH耐性
1.0〜8.0
耐圧 / 最高温度
600 bar(8700 psi)/ 80℃

公定法分析条件(NH法)
※アレルゲンを含む食品の検査方法 最終改正2026年4月1日より

カラム温度
50℃
流速
0.4 mL/min
注入量
≤ 10 µL 推奨
ガードカラム
公定法に記載なし
  • LC-MS/MS専用設計の
    独自の化学結合型固定相
    立体保護リガンドを最適配置する独自の化学結合プロトコルにより酸加水分解を抑制。pH 1.0以下の強酸性移動相においても安定した保持プロファイル・ピーク形状・レスポンスを維持。フェーズブリードを低減し、MSベースラインを安定化。
  • 優れた堅牢性
    0.2%ギ酸含有移動相を用いた連続500回注入後も、標的化合物の保持時間は15秒MRMウィンドウ内を維持。ロット間再現性についても独自QC規格で保証されており、クリティカルなワークフローの長期安定運用に対応。
  • Inert表面処理による
    ペプチド吸着の抑制
    ステンレス表面に施したプレミアム不活性化コーティングにより、キレート性を持つペプチド・タンパク質の非特異的吸着を低減。不動態化処理や移動相添加剤なしでシャープなピーク形状を実現し、回収率と感度を改善。
  • コアシェル粒子(SPP)
    による高効率分離
    2.7 µm表面多孔性粒子は固体コアに薄い多孔質シリカ層を持ち、拡散経路を短縮してピーク分散を低減。全多孔性粒子と比較して高い理論段数を提供し、既存HPLCでもUHPLC並みの効率を実現。

カラム特性プロファイル

Column Interaction Profile

Column Interaction Profile

主要相互作用:Dispersion(分散力)
補完:H-Bonding(水素結合)
補完:Cation Exchange(カチオン交換)

Solute Retention Profile

Solute Retention Profile

Target Analyte Functionalities:

• Hydrophobic compounds(疎水性化合物)

• Protonated bases(プロトン化塩基)

Raptor SPP コアシェル構造図

Raptor SPP コアシェル構造

固体コアを薄い多孔質シリカ層で覆った表面多孔性粒子(SPP)構造。アナライトの拡散経路を短縮しピーク分散を低減。Sterically protected C18リガンドをSi-Oを介して結合。立体保護により酸加水分解を抑制し、強酸性移動相(pH 1.0〜)でも安定した保持を維持。

品番(公定法記載品:3.0 mm × 100 mm, 2.7 µm)

製品名 Cat.#
Raptor Inert ARC-18, 2.7 µm, 100 × 3.0 mm 9314A1E-T
Raptor Inert ARC-18 EXP ガードカラムカートリッジ 2.7 µm, 5 × 3.0 mm(3本入、オプション) 9314A0253-T

※ガードカラムカートリッジにはEXPダイレクトコネクトホルダ (cat.# 25808)  が必要です。

NH法 標的ペプチドおよびMRM検出条件(公定法記載値)

標的ペプチド 配列 プリカーサーイオン (m/z) プロダクトイオン (m/z) カラム保持時間の目安
標的ペプチド① ADIYTPEVGR 560.8 557.3 / 658.4 / 821.4 約 7.7 分
標的ペプチド② LTTLNSLNLPILK 720.4 298.2 / 470.3 / 1011.6 約 11.7 分

イオン化:ESI正イオンモード(MRMモード)。陽性判定:全トランジションのS/N比 ≥ 10。
注入量は≤ 10 µL推奨。保持時間は使用機器により異なる場合がある。
出典:消費者庁「アレルゲンを含む食品の検査方法」最終改正2026年4月1日 第2.2.6.4.2.1項 [1]

FAQ

よくあるご質問

カシューナッツのアレルギー表示義務化はいつ施行されましたか?
消費者庁は2026年4月1日付で食品表示基準を改正し、カシューナッツを特定原材料(義務表示)9品目目に追加しました。公布日から2年間の経過措置期間が設けられており、完全施行は2028年4月1日です(経過措置期間:2028年3月31日まで)。
出典:消費者庁「アレルゲンを含む食品の検査方法」最終改正2026年4月1日 [1]
カシューナッツの公定LC-MS/MS検査法に指定されたカラムは何ですか?
消費者庁公定検査法のLC-MS/MS確認試験法(NH法)において、「Raptor Inert ARC-18 2.7 µm, 3.0×100 mm(Restek社製)又は同等の結果が得られるものを用いる」と第2.2.6.4.2.1項に明記されています。NS法にはTriart C18 Metal-Free(YMC)、HF法にはInertSustain AX-C18(GL Sciences)が記載されています。
出典:消費者庁「アレルゲンを含む食品の検査方法」最終改正2026年4月1日 [1]
ELISA法だけでは不十分なのですか?
ELISA法はスクリーニング(定量検査・第1段階)として公定法でも引き続き使用されます。ただし、カシューナッツとピスタチオは主要アレルゲン(2Sアルブミン)のアミノ酸配列が約69%一致するため、ELISA法(抗原抗体反応)単独では両者を完全に区別することが困難です。このため公定法では、ELISA陽性(≥10 µg/g)の場合にLC-MS/MS法またはPCR法による確認検査(第2段階)の実施を規定しています。
出典:消費者庁 第7回食物アレルギー表示アドバイザー会議資料(2025年1月21日)[3]、消費者庁「アレルゲンを含む食品の検査方法」最終改正2026年4月1日 [1]
3つのLC-MS/MS公定法のうちどれを選べばよいですか?
公定法のNH法・NS法・HF法は、いずれも基準を満たした正規の確認試験法であり、検査機関が任意に選択できます。[1]
選択の目安は2つの観点から整理できます。
1.試料・食品の性質による選択
高度加工食品(焼成菓子・チョコレート・ソース類など)のように、加工の過程でたんぱく質が凝集・変性した状態の試料にはpNH法が適しています。化学変性剤(尿素・DTT)により難溶性のたんぱく質も抽出できます。焙煎ナッツやペースト・中加工食品にはpNS法(熱変性)、素焼きや粉末など加工度が低い試料にはpHF法(室温抽出)が対応しやすい傾向があります。
2.ラボ運用の観点による選択
ELISA検査との試料共用を優先する場合はHF法(抽出液ExStaが共通)、内標準試薬なしでシンプルに運用したい場合はNH法(S/N比判定)、高精度な内標準管理を行いたい場合はNS法またはHF法が適しています。いずれか1法に絞れない場合はNH法を基本条件とし、回収率が不十分な試料にのみ他の前処理を補助的に使用する方法も実用的です。
出典:消費者庁「アレルゲンを含む食品の検査方法」最終改正2026年4月1日 [1]
Raptor Inert ARC-18はガードカラムが必要ですか?
消費者庁公定検査法(NH法)にはガードカラムの記載はなく、Raptor Inert ARC-18単体での使用が示されています。カラム保護の観点からガードカラムの使用は可能ですが、追加するとカラム長が増えるため保持時間が変化します。使用する場合は同一固定相のARC-18 EXPガードカラムカートリッジ(Cat#. 9314A0253-T、5×3.0 mm)を選択し、使用前に保持時間を再確認してください。
出典:消費者庁「アレルゲンを含む食品の検査方法」最終改正2026年4月1日 [1]
食品メーカーはどのような検査対応が必要ですか?
カシューナッツを原材料として使用している、または使用している可能性がある加工食品メーカーは、経過措置期間(〜2028年3月31日)内に①原材料規格書の確認(カシューナッツ・ピスタチオ使用有無)、②製品ラベルの改訂、③製造ライン洗浄評価によるコンタミネーション管理、④従業員教育、の対応が必要です。自社検査または第三者検査機関への委託いずれの場合も、公定法に準拠した検査方法の採用が求められます。
出典:消費者庁「アレルゲンを含む食品の検査方法」最終改正2026年4月1日 別添2「判断樹について」[1]
ピスタチオも義務表示の対象になりましたか?
ピスタチオは今回の改正で「特定原材料に準ずるもの」(推奨表示・20品目)に追加されました。義務表示(特定原材料)ではなく、可能な限り表示するよう努めることが求められる推奨表示です。カシューナッツとの交差反応性から、カシューナッツアレルギー患者への情報提供として表示対応を検討することが推奨されます。
出典:消費者庁「アレルゲンを含む食品の検査方法」最終改正2026年4月1日 別表1 [1]

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本ページの情報は消費者庁公定検査法(最終改正:2026年4月1日)および同庁公開資料に基づいています。
規制対応の最終判断は消費者庁の公式発表をご確認ください。

Raptor® is a registered trademark of Restek Corporation.
Restek® Pure Chromatography™

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