- EPA Method 8327に規定されているPFASをメソッド条件より3倍速く分析
- 直接注入法により、時間のかかるサンプル前処理が不要
- Force C18 FPPカラムはPFBAの保持を高め、ピーク形状を改善
飲料水中のペルおよびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)の分析では、通常、スチレンジビニルベンゼン系や弱陰イオン交換(WAX)型の固相抽出(SPE)を用いたサンプル前処理が行われます。一方、非飲料水におけるPFAS分析では、SPEを省略した直接注入法が一般的です。この手法の代表例がEPA Method 8327であり、LC-MS/MSを用いて地下水、表層水、排水といった非飲料水中の24種類のPFAS化合物を定量するための、バリデーションされた検査方法です。直接注入法は、時間と手間のかかるSPE処理を不要にすることで、前処理にかかるコストや作業のばらつきを回避できるという大きな利点があります。しかしながら、この方法では1回あたりの分析時間が21分程度と長く、サンプルスループットの向上には限界がありました。
そこでRestekは、EPA 8327に規定されている24種類のターゲットPFASに加え、さらに19種類の代替PFASも対象とし、わずか8分のサイクルタイムでこれら全43化合物を一斉分析する高速クロマトグラフィ法を開発しました。本メソッドは、すべての分析対象成分に対して充分な検出感度(希釈前濃度で10 pptレベル)を実現しており、スループットと感度の両立が可能です。
以下に示す分析条件で分析を行いました。
| カラム | Force C18 (cat.# 9634352) |
| カラムサイズ | 50 mm x 2.1 mm ID |
| 粒子径 | 3 µm |
| 細孔径 | 100 Å |
| カラム温度 | 40℃ |
標準試料/サンプル
| 希釈液 | 50:50 水:メタノール、0.1%酢酸 |
| 濃度 | 80 ppt (サロゲートまたは同位体標識PFASの場合は40 ppt) |
| 注入量 | 10 µL |
移動相
| A | 水、5mM酢酸アンモニウム |
| B | メタノール |
| 流速 | 0.4 mL/min. |
グラジエント 80%A, 20%B(0.00分)→5%A, 95%B(6.00分)→5%A, 95%B(6.50分)→80%A, 20%B(6.51分)→80%A, 20%B(8.50分)
| 検出器 | MS/MS |
| イオン化モード | ESI negative |
| モード | MRM |
| 装置 | UHPLC |
| 備考 | インジェクターの前にPFASディレイカラム(cat.# 27854)を設置 |
結果として、すべてのターゲット化合物は効率よく分離され、良好なクロマトグラムが得られました。FPPカラムは、表面積およびカーボンロード量が高く、従来一般的に使用される表面多孔性粒子(SPP)カラムに比べて良好な保持を実現します。特に、PFBA(ペルフルオロブタン酸)のような溶出が早いターゲット化合物に対しては、この分離能の高さが大きな利点となります。
PFBAは、分析条件によってはピーク形状が極めて悪化することがあります。例えば、サンプル希釈液と初期の移動相の組成が一致しないことでクロマトグラフィーに不安定要素が生じ、フロンティングやピーク分裂といった現象が発生しやすくなる、などです。こうした課題に対しては、Force C18カラムの採用が有効です。これによりPFBAの保持時間を適度に延長し、クロマトグラフィーの安定性と精度を向上させることができます。実際にPFASの直接注入法を採用している複数のラボにおいても、Force C18カラムの使用により、EPA Method 8327に基づく化合物群に対して、従来のおよそ3分の1という短時間で、確かな分離性能が得られたとの報告が確認されています。また、SPPカラムでPFBAの保持やピーク形状に課題を抱えていたラボでも、ここで設定した条件下でForce C18カラムを使用することにより、飛躍的な改善が見られています。


