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米国EPA 1633によるPFAS分析: アセトニトリルの使用で胆汁酸分離を最適化

03 Apr 2023

この記事にアクセスしたということは、EPAが発行した草案「Analysis of Per- and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS) in Aqueous, Solid, Biosolids, and Tissue Samples by LC-MS/MS.」に深い関心をお持ちであることと思います。草案には、41種類のPFAS化合物を分析する際の重要なガイドラインが記載されています。その中でも特に注目すべきは、胆汁酸とPFOS(パーフルオロオクタンスルホン酸)の干渉についてです。PFASの分析方法において、胆汁酸がどのようにPFOSに干渉するかは、使用される移動相の有機溶媒によって大きく異なることが示されています。例えば、アセトニトリルを使用した場合、胆汁酸の一種であるタウロデオキシコール酸(TDCA)をモニタリングする必要があります。そして、この胆汁酸とPFOSは、少なくとも1分以上の間隔を空けて分離することが推奨されています。また、メタノールなど他の有機溶媒 を使用する場合には、タウロヘノデオキシコール酸(TCDCA)やタウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)を含めた3つの胆汁酸が、PFOSとの間で1分以上の保持時間を確保する必要があることも記載されています。この保持時間の確保は、高精度な分析を実現するためには欠かせません。さらに、保持時間の要件に加えて、胆汁酸はいかなるPFAS分析対象成分と共溶出しないことも重要です。これにより、分析の精度が確保され、正確な結果が得られます。アセトニトリルを使用して、このようなガイドラインを満たす方法を確立したので、最適化された条件でPFASの分析が行えるようになっています。

アセトニトリルを使用したLC-MS/MSによるForce C18カラムでのEPA 1633 PFAS分析(ピークリストと分析条件を含む完全版はPDFでダウンロード可)
EPA 1633 PFAS on Force C18 by LC-MS/MS using Acetonitrile

LC_EV0585

5mM酢酸アンモニウムを含む水とアセトニトリルを移動相として使用し、Force C18カラムを採用したこのメソッドは、非常に効率的にPFOSと胆汁酸(TDCAなど)を分離します。結果として、PFOSの保持時間(8.8分)は、TDCAの保持時間(5.8分)から1分以上分離され、サイクルタイムが14分という非常に短い時間で全PFAS成分とTDCAの分離が可能となっています。アセトニトリルを使用することにより、3つの胆汁酸(TDCA、TCDCA、TUDCA)をPFOSとの分離において1分以上の分離を確保することができ、非常に効率的な解析が可能です。ただし、TUDCA(保持時間 = 5.5分)とADONA(保持時間 = 5.7分)との間には十分な分離が得られませんでした。

blog pfas epa 1633 and bile acids 01

移動相をメタノールに切り替えるとどうなるでしょうか?アセトニトリルの場合には、モニタリングが必要なのは1つの胆汁酸干渉のみでした。しかし、メタノールの場合、3つの胆汁酸について、EPA 1633の要件に従って他のPFAS化合物と共溶出しないことと同時に、PFOSから少なくとも1分は分離させることが必要です。EPA 1633の要件を満たす必要があることに加えて、装置の使用効率を最大化したいため、可能な限りサイクルタイムを短縮することも重要です。移動相にメタノールを使用したメソッドスカウティングクロマトグラム(スクリーニング実験)を見てみましょう。

カラム:Raptor C18 with Guard 
寸法:50 mm x 2.1 mm ID
粒子サイズ:1.8 µm
温度:30 °C
標準試料/サンプル:PFAS 1633
希釈剤:
注入量:1 µL
移動相A:5 mM酢酸アンモニウム水溶液
移動相B:メタノール
注入量:10 µL

流速:0.4 mL/min 

グラジエント:40% B (0分) → 75% B (10.00分)  → 100% B (12.00分)  → 100% B (13.00分)  →  40% B (13.01分)  →  40% B (15.00分)

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スカウティンググラジエントを使用して、EPA 1633標準試料と胆汁酸の混合物を分析し、それぞれの保持時間を比較しました。メタノールを使用した場合、EPA 1633の要件を満たす分離は十分に達成できませんでした。メタノールによるアプローチでは、PFOSと最も溶出時間の近い胆汁酸(TCDCA)との分離はわずか0.263分でした。次に、分析時間を長くし、40~75%のグラジエンド時間を2分追加し、このメソッドを再度テストしました。

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この調整で、PFOSと最も溶出時間の近い胆汁酸であるTCDCAとの分離はわずかに改善しましたが、その代償としてメソッドのサイクルタイムが長くなり、理想的な分析時間を確保することが難しいという結果が得られました。したがって、EPA 1633の要件を十分に満たすためには、アセトニトリルが最適な移動相の有機溶媒であることが分かります。同時に短いサイクルタイムで効率的な分析が可能であることも証明されました。

PFAS分析に関するさらなる情報は、www.restek.com/PFAS-JPから確認できます!

Author

  • Jamie York, PhD

    Jamie York is a scientist in the Applications Lab at Restek Corporation in the LC Solutions department, where she works on the development of novel applications for the food, clinical, and cannabis markets. She earned her PhD in chemistry from The University of Texas at Arlington in 2019. There, she mastered many analytical techniques including gas chromatography–vacuum ultraviolet; gas chromatography–mass spectrometry; matrix-assisted laser desorption/ionization; and liquid chromatography–mass spectrometry with a focus on food and environmental research. Jamie continued her post-doctoral work at The University of Texas at Arlington with a focus on the analysis of mammalian cell culture media by LC-MS/MS.

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