この記事では、Restekが提供する標準物質が世界水準の認証標準物質(CRM)であるための10の重要ステップを分かりやすく解説します。標準物質として耳にすることがある認証標準物質(CRM)とは何か、分析精度が重要な分析者に向けた記事となります。
◆認証標準物質(CRM)とは?:ISO/IEC 17025 & ISO 17034に基づく定義
認証標準物質(Certified Reference Material/CRM)は、一般的にはリファレンススタンダードとも呼ばれ、参照基準や標準物質を意味することがあります。RestekのCRMは、ISO17034及びISO/IEC17025に基づく厳格な要件を満たした、CRMの中でも特に厳密に定義されたサブセットです:
- 適格な機器の適格な方法で特性が決定された原材料を使用
- 文書化された手順に基づき、ISO認定施設で製造
- 製造者の認定範囲内に該当
これらの認定はILAC MRA署名機関であるA2LAにより付与されており、Restekの証明書は国際的に承認・受け入れられています。つまり、RestekのCRMは、ISOに準拠するだけでなく、ILAC MRAを通じて世界中の規制当局や試験所で通用する“真正なCRM”です。
RestekのISO品質認証についての詳細および認証(認定範囲を含みます) はwww.restek.com/ iso をご参照ください。
◆認証標準物質(CRM)であるための10の重要ステップ
1. 認証標準物質開発の出発点:顧客ニーズと公定法レビュー
どのような有機標準物質を製品として開発すべきかを決めるために、Restekの専門家は世界中の政府の規制や公定法に配慮し、お客さまや販売代理店と積極的に関わりを持っています。規制の変更やお客さまのニーズ、当社の25年以上の経験に基づいて製品が決まると、経験豊かなRestekの化学者は適切な化合物の組合せと濃度で構成された安定した認証標準物質(CRM)を提案します。次いで、全ての処方は別の化学者によって精度、適合性および溶解性の徹底的な見直しを受けます。
2. ISO 17034に準拠した信頼性確保:適合性・安定性の検証
認証標準物質(CRM)に使用されるすべての原材料は、厳しい純度基準に保たれ、処方および見直しの両方で化合物の適合性が精査されます。また、信頼ある正確な有効期限を保証するため、ISO 17034およびISOガイド35に従った、長期安定性試験と短期出荷安定性試験を実施しています。
3. 原材料の徹底した特性付け:GC-MSやLC-MSによるマルチ手法分析
Restekの品質管理部門(QC)では、GC-FID、HPLC、GC-ECD、GC-MS、LC-MS、屈折率測定および融点測定のうち、2つ以上の手法で、混合成分と溶媒の化学物質の特性と純度を確認します。
4. NISTトレーサブル基準による精度保証:分析天びんの校正
すべての分析天びんは、NIST *トレーサブルな分銅を用いて毎日7つの質量レベルで検証され、正確な測定を保証するためにISO/IEC 17025認定事業者によって毎年校正されています。
* National Institute of Standards and Technology
5. 標準試薬の安定性維持:不活性化処理されたガラス器具とアンプル
Restekの認証標準物質(CRM)は、Class A(高位規格)のメスフラスコやピペットを使用して調製されます。アンプルおよび、調製と保存に用いるバイアルは、分析対象種の損失を防ぐため不活性化処理されています。
6. ISO認定施設での製造:ISO 17034 & ISO/IEC 17025 認定

ペンシルベニア州にあるRestekの認証標準物質(CRM)製造施設及びQCラボは、ISO 17034およびISO / IEC 17025の認定を取得しています。これらの認定は、1994年から継続しているISO 9001に加えて、国際標準化機構(ISO)が定めた世界レベルの品質基準を満たしていることを示しています。これらのISO認定ラボでは、そこでの生産、原材料分析、定性、および定量分析を全ておこなうことができます。RestekのISO認定ラボでは、既製品とカスタム品の両方のCRMを提供しています。 詳細についてはwww.restek.com/isoをご覧ください。
7. 分析証明書と文書提供:CRMの信頼を支える透明性
Restekは自社の認証標準物質(CRM)に、完全にISOに準拠した3つのレベルの分析証明書(Certificate of Analysis: CoA/CofA)を用意しており、ほとんどの既製品(カタログ品)には、分析証明書-クロマトグラフィーPlusが添付されています。
- 分析証明書 – Gravimetric(重量記録)には、すべての原材料情報、ロット番号と純度、異性体化合物の異性体比、および計算された濃度が記載されています。また、認証標準物質 (CRM) については、関連する不確かさも記載されます。
- 分析証明書 – Chromatographic(組成確認のクロマトグラム付き)には、すべての原材料情報、ロット番号と純度、異性体化合物の異性体比、および計算された濃度が記載されています。また、CRMについては関連する不確かさも記載されます。 さらに、パッケージユニットから1つを抜き取り、混合物の組成を確認するために適切な手法でテストします。 各ピークが同定されたこの標準物質のクロマトグラムは証明書に含まれています。
- 分析証明書 – Chromatographic Plus(n=3・ロット間統計比較が追加) には、すべての原材料情報、ロット番号と純度、異性体化合物の異性体比、および計算された濃度が記載されています。CRMについては関連する不確かさも記載されます。さらに、パッケージユニットのうち1つはn=3で分析され、そのピーク面積値は統計的に別ロットと比較されます。この別ロットは、その前のロットがある場合は前のロット、または新しく生産された独立した2番目のロットとなります。 各ピークが同定されたこの標準物質のクロマトグラムは証明書に含まれています。
Restekのすべてのカタログ品およびカスタム品の標準物質に関する、製品証明書、定量アッセイデータと統計値、標準物質バッチレコードを含む詳細なデータパックは、www.restek.com/documentation からご覧いただけます。
8. GHS準拠・QRコードで証明書へ即アクセス:包装とラベル
すべてのRestek認証標準物質(CRM)は、出荷後から納品までの間の製品を確実に保護できるように、厳重に梱包されています。製品ラベルは、安全性とGHS準拠の記載に加えて、分かりやすいフォーマットで保管方法、安全性、および保管期限情報を提供します。すべてのRestekリファレンススタンダードは、コンパクトで耐久性のある環境にやさしいパッケージに入れられ、出荷からお届けまで保護されています。ノートやバイアルに貼るラベルは、保管条件や安全性、保管期限などの重要な情報を読みやすく表示し、安全性を高めるとともにGHSに対応しています。アンプル保管用チューブのQRコードから、Restek.comにあるご使用のスタンダードとロット番号の分析証明書にすぐにアクセスできます。現行のパッケージとラベルの改善については、www.restek.com/Standards2022 で詳細をご覧ください。
9. 付属品:安全で便利なセーフクラッカーと不活性化バイアル
5mL未満の認証標準物質(CRM)には移し替え用に不活性化処理されたスクリューバイアル (cat.# 24640)が付属されています。ご注文毎にアンプルを安全に折ることができるRestekセーフクラッカーが付いてきます。(セーフクラッカーについては販売されている地域によっては異なる場合があります。Restek株式会社へお問い合わせください。)
10. 在庫管理:4,200以上の化合物と1,500製品を常時供給
必要な時に製品をご提供できるよう、Restekは1,500以上のカタログ掲載品と、最も一般的なキャリブレーションスタンダードを複数のロット、さらに4,200以上の化合物の在庫を継続的に分析し管理を行っています。 期限切れまたは期限切れに近い認証標準物質(CRM)を誤って納品することを避けるため、Restekでは有効期限の数か月前に在庫から撤去します。
◆Restekのカスタムリファレンススタンダード:オーダーメイド対応
分析に必要な標準物質は、用途や規制要件によって大きく異なります。Restekでは、こうした多様なニーズに応えるため、カスタムリファレンススタンダード(認証標準物質, CRM)のオーダーメイド対応を行っています。
化合物の組み合わせ、濃度、溶媒、容量などを自由に設計できるため、研究開発から規制試験まで幅広く対応可能です。すべての処方は経験豊富な化学者によって提案され、別の化学者による厳格なレビューと安定性の検証を経て確定されます。
さらに、RestekはISO 17034およびISO/IEC 17025に準拠した製造体制を整えており、ILAC MRA署名機関の認定を受けています。これにより、カスタム品でも国際的に通用する品質基準を満たした信頼性の高いCRMを提供しています。加えて、製品証明書、定量アッセイデータ、統計値、標準物質バッチレコードを含む詳細なデータパックもご用意しており、品質保証や規制対応における裏付けとして安心してご利用いただけます。
カスタムリファレンススタンダードの見積り依頼はwww.restek.com/solutionsにアクセスしてください。詳細については、www.restek.com/standards からご参照いただけます。
◆認証標準物質(CRM)におけるPrimaryとSecondary :TNI・DoD要件とRestekの対応力
ISO規格に基づく認証標準物質 (CRM) の使用は国際的に求められる基本要件ですが、米国ではさらに追加の規制が存在します。代表的なものが、TNI(The NELAC Institute)およびDoD(米国国防総省)QSMの規定です。
- TNI (V1M4 4.1.7.1.1)
初期キャリブレーションは、別メーカー製、または同一メーカーでも独立したロットで調製された標準で検証することを要求。 - DoD QSM 5.3 (2019, V1M4)
初期キャリブレーションは原則として別メーカー製の標準で検証することを求めています。ただし、同一メーカー製であっても、異なる原料ソースや独立した工程で調製された別ロットであれば“Secondary source”として認められます。
このように、米国の規制では「Primary source(一次ソース)」に加えて「Secondary source(二次ソース)」を用いたクロスチェックが義務づけられています。
RestekのCRMは、ISOに準拠した信頼性により一次ソースとして利用可能であることはもちろん、同一製品でも独立した別ロットをご提供できるため、二次ソース要件にも対応可能です。これにより、ラボはISO規格に加え、TNIやDoDが求める追加要件をRestekだけで完結できます。
Restekはプライマリソースとしても、セカンダリソースとしても利用可能なCRMを幅広く提供できるため、ISO規格とともにTNIやDoDの追加要件にも対応できます。加えて、GC・LCカラムや前処理製品、アクセサリも揃うので、分析に必要なすべてをワンストップでご提供します。
まとめ:認証標準物質(CRM)と標準試薬の品質確保に向けて
本記事では、ISO 17034・ISO/IEC 17025 (ILAC MRA) に準拠した認証標準物質(CRM)と標準試薬を選定・利用するための10の重要ステップを紹介しました。 Restekは、世界基準の品質管理・安定性検証・透明な文書提供を通じて、環境・食品・医薬品など多様な分析分野で信頼性の高いリファレンススタンダードを提供しています。 適切な認証標準物質を用いることは、分析の精度と信頼性を高める最も確実な方法です。

