Key Highlights
- PromoChrom SPE-03システムにより固相抽出(SPE)を自動化し、PFAS分析のワークフローをシンプルかつ効率的に運用できます。
- フィルターエイド(ろ過助剤)入り固相抽出 Resprep PFASカートリッジにより、精度と信頼性に優れた分析結果が得られます。
- 充填済みフィルターエイドが目詰まりおよび再抽出の手間を防ぎ、時間短縮と省力化につながります。
はじめに:PFAS分析における前処理 固相抽出(SPE)の役割~自動化へ
環境分析ラボにとって、固相抽出(SPE)はPFAS(ペルおよびポリフルオロアルキル化合物)分析の要といえる前処理技術です。ほとんどのEPAメソッドやASTMメソッドでもSPEの使用が規定されており、現場への普及度は高い状況にあります。
SPEはスチレン-ジビニルベンゼン(SDVB)系または弱アニオン交換(WAX)系のカートリッジを用いているので、溶媒を大量に消費する分液ロートや連続した液-液抽出といった手法を使わずに、水性マトリックスからPFAS化合物を効率的に抽出可能です。また、固体マトリックスにおいても、溶媒抽出と水交換を組み合わせることで対応が可能です。従来、SPEはバキュームマニホールドで手動操作されてきましたが、システムの自動化が進んでいるため、作業効率が大幅に向上してきています。
バキュームマニホールドからの脱却:PFAS分析のSPE自動化
多くのメソッドでは、バキュームマニホールドを使用した手動SPEが想定されています。ほとんどのメソッドにおいて自動SPEについては「使用可能」と言及される程度ですが、それは装置間の互換性がないため、具体的な実装方法が明記できないからです。そのため、自動SPEの導入方法と、使用するカートリッジのメソッド適合性は各ラボで確認しなければなりません。
以前の研究では、フィルターエイド入りの二層式Resprep PFAS SPEカートリッジ (cat.# 28931) がThermo AutoTrace 280 PFASシステムで良好な結果を示すことが実証されています[1]。このカートリッジは、カーボン層とWAX層を組み合わせた二層構造(デュアルベッド)を採用しているため、WAXカートリッジとカーボンカートリッジを別々に使用する場合と比べて、ワークフローをよりシンプルかつ迅速に完了できます。さらに、フィルターエイドは出荷時に充填済みのため、懸濁物質が多く含まれるサンプルでも目詰まりを防ぎ、1回の抽出で前処理が完了します。
今回の研究で、Resprep PFAS SPEカートリッジと複数の競合他社製デュアルベッドカートリッジ、および単層WAX専用カートリッジとの性能比較を行いました。自動化に使用したのはPromoChrom社のSPE-03システムで、これは以前の研究で使用したものとは異なります。このシステムは、プログラム可能な統合インターフェース、ボトルリンス機能、そしてコンパクトな設置面積といった利便性を備えています。今回の研究目的は2つです。①SPE-03装置との互換性確認とパラメータの確立、②各カートリッジの性能比較です。
自動化ワークフローへのメソッド移管
PFAS分析のSPEを自動化する際にまず課題となるのは、メソッドに記載されたバキュームマニホールドの操作手順をSPE装置に変換することです。多くの装置では、SPEプロセスをステップごとに詳細に記述する必要があるため、バキュームマニホールドを使う場合よりも手順が複雑に見えることがあります。しかし、メソッドの各ステップの意味を理解してしまえば、自動化メソッドへの移行は比較的スムーズに進められます。本研究で使用したPromoChromメソッドのパラメータをTable Iに示します。
Table I: PFAS分析SPE自動化のためのPromoChrom SPE-03パラメータ (EPA Method 1633準拠)
| 作業 | Inlet 1 (溶媒/サンプル) |
Inlet 2 (エア比率) |
流速(mL/min) | 容量 (mL) | 時間 |
|---|---|---|---|---|---|
| Waste 2に溶出 | 1% アンモニア含有メタノール | 8 | 15 | ||
| Waste 1に溶出 | 0.3 M ギ酸水溶液 | 8 | 5 | ||
| サンプルをWaste 1に添加 | サンプル | 5 | 560 | ||
| 洗浄 | 水 | 20% | 70 | 2.5 | |
| サンプルをWaste 1に添加 | サンプル | 5 | 5 | ||
| 洗浄 | 水 | 20% | 70 | 5 | |
| サンプルをWaste 1に添加 | サンプル | 5 | 5 | ||
| 洗浄 | 水 | 20% | 70 | 5 | |
| サンプルをWaste 1に添加 | サンプル | 5 | 5 | ||
| 振とう | 20 秒 | ||||
| 洗浄 | 1:1 0.1 M formic acid:methanol | 20% | 70 | 1.3 | |
| サンプルをWaste 1に添加 | サンプル | 5 | 3 | ||
| 洗浄 | 1:1 0.1 M ギ酸:メタノール | 20% | 70 | 5 | |
| サンプルをWaste 2に添加 | サンプル | 5 | 5 | ||
| 振とう | 20 秒 | ||||
| Waste 2へエアパージ | エア | 5 | 3 | ||
| サンプルをWaste 2に添加 | サンプル | 5 | 5 | ||
| 窒素ブロー | 1 分 | ||||
| 洗浄 | 1% アンモニア含有メタノール | 20% | 70 | 1.3 | |
| 容器1に回収 | サンプル | 5 | 3 | ||
| 洗浄 | 1% アンモニア含有メタノール | 20% | 70 | 5 | |
| 容器1に回収 | サンプル | 5 | 5 | ||
| 振とう | 10 秒 | ||||
| 容器1に回収 | サンプル | 5 | 5 | ||
| 待機 | 1 分 |
精度と再現性の評価
PromoChromシステムを用いた自動SPEにおいて、カートリッジの性能を評価しました。サンプルには、脱イオン水にPFAS 28成分混合標準液 (cat.# 30734) を5 ng/Lで添加したものを使用しました。SPEプロセス自体の正確な回収率を測定するため、抽出用の内標準物質は使用していません。評価対象は以下の3種類です。Figure 1に、各カートリッジの平均回収率を示します。

回収率については、ほとんどのPFAS化合物でカートリッジ間での違いは確認されませんでした。ただし、溶出が遅いいくつかの長鎖PFAS化合物に関しては傾向が異なります。WAX専用カートリッジはすべてのWAX/カーボンデュアルベッドカートリッジを上回る回収率を示しており、これはカーボン層が長鎖PFAS化合物をより強く保持していることを示しています。競合社3(Figure 1 のCompetitor 3)については特に顕著で、一部の化合物では40%未満という低い回収率となりました。
Figure 2に、各カートリッジの再現性を示します。全体として、RestekのカートリッジはほとんどのPFAS化合物で%RSD 15%を大きく下回り、競合他社製品より良好な結果を示しました。溶出が遅い化合物ほど%RSDはわずかに上昇する傾向が見られますが、これもカーボン層による保持が影響していると考えられます。競合社3(Figure 2 のCompetitor 3)については、Figure 1に示した低い回収率に加えて、ここでも大きなばらつきを示す結果となりました。全PFASを対象とした平均回収率と再現性はTable IIをご参照ください。

Table II: 全対象PFAS化合物の平均回収率と再現性
| SPEカートリッジ | 平均回収率 | 平均 %RSD |
|---|---|---|
| Resprep polymeric (WAXのみ) | 102.2% | 5.8% |
| Resprep PFAS + Filter Aid (WAX/カーボン) | 99.6% | 7.9% |
| Competitor 1 (WAX/カーボン) | 98.7% | 9.0% |
| Competitor 2 (WAX/カーボン) | 87.7% | 10.0% |
| Competitor 3 (WAX/カーボン) | 75.7% | 15.3% |
まとめ
Resprep WAXおよびWAX/カーボンSPEカートリッジは、代表的な自動化されたSPEシステムとの互換性が確認されました。これにより、PFAS分析のSPE自動化を検討しているラボは、サンプル前処理をスムーズに効率化できます。また、フィルターエイド入りResprep PFAS SPEカートリッジは、他社製デュアルベッドカートリッジと比較しても同等以上の精度・再現性が得られ、信頼性の高い分析データを提供します。また、フィルターエイドがあらかじめ充填されているため、カートリッジの目詰まりが起こりにくく、再抽出の必要がないため、分析時間を大幅に短縮できます。
謝辞
本研究のSPE自動化評価にあたり、PromoChrom SPE-03システムをご提供いただいたMaryland Spectral Services社(https://www.mdspectral.com/) に感謝申し上げます。
参照文献
1. J. Hoisington, 非飲料水のPFAS分析:簡略化されたSPE, Application note EVAN4369-, Restek Corporation, 2024. https://discover.restek.com/ja/application-notes-ja/evan4369-ja/simplified-spe-for-pfas-analysis-of-non-potable-waters-japan


