第1章:水道法改正の背景と概要
(RESTEK JAPANオリジナルシリーズ 1)
■ 水道法改正の背景
近年、PFAS(Per- and Polyfluoroalkyl Substances:ペルフルオロアルキル化合物類)、特にPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)およびPFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、その高い難分解性、長距離移動性、生体蓄積性により、国内外において重要な環境・公衆衛生上の懸念物質とされています。これらの化合物は、水環境を通じて人の健康へ影響を及ぼす可能性が指摘されており、各国で規制が強化されつつあります。そこで、この制度改正の概要から実務上の対応ポイント、さらに精密なPFAS分析に必要な技術的ソリューションや装置・標準物質の選定基準まで、全4回のシリーズとして詳しく解説していきます。
PFAS分析においては、対象化合物の濃度が極めて低レベル(ng/L〜pptレベル)であることに加え、複雑な水マトリックス中での高精度な分離・定量が求められるため、一般的な有機物分析とは異なる専門的ノウハウが必要とされます。さらに、分析対象そのものが装置や試薬、容器からのコンタミネーション源となり得るという特性を持つため、サンプル採取から分析に至る全工程での厳密な管理(ブランク対策、材料選定、装置構成)が不可欠です。
こうした背景から、今後必要とされるのは、単なる法規制への形式的な対応にとどまらず、科学的根拠に基づくPFASのリスク評価を支える、信頼性の高い分析体制と定量手法の確立です。現場の分析者・研究者・水道事業体の皆様が、制度対応を超えて持続可能な水質管理体制を築く一助となることを目指し、本シリーズをお届けします。
<シリーズ詳細>
第1回:水道法改正の背景と概要
第2回:制度改正の背景とPFOS・PFOAの発生源リスクを正しく理解する
第3回:PFOS・PFOAが与える健康・環境影響と水質基準の科学的根拠
第4回:PFAS分析に求められる技術基準と留意点
第5回:PFAS分析を支えるRestek製品と最新メソッドの導入事例
(環境省「水質基準に関する省令改正の概要について」(令和7年8月8日 水道水質・衛生管理室)より)
水質基準項目(52項目)
| 項目 | 基準 | 項目 | 基準 | ||
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 一般細菌 | 1 mLの検水で形成される集落数が100以下 | 27 | 臭素酸 | 0.01 mg/L以下 |
| 2 | 大腸菌 | 検出されないこと | 28 | 総トリハロメタン(23, 25, 29, 30総和) | 0.1 mg/L以下 |
| 3 | カドミウム及びその化合物 | カドミウムの量に関して、0.003 mg/L以下 | 29 | トリクロロ酢酸 | 0.03 mg/L以下 |
| 4 | 水銀及びその化合物 | 水銀の量に関して、0.0005 mg/L以下 | 30 | ブロモジクロロメタン | 0.03 mg/L以下 |
| 5 | セレン及びその化合物 | レンの量に関して、0.01 mg/L以下 | 31 | ブロモホルム | 0.09 mg/L以下 |
| 6 | 鉛及びその化合物 | 鉛の量に関して、0.01 mg/L以下 | 32 | ホルムアルデヒド | 0.08 mg/L以下 |
| 7 | ヒ素及びその化合物 | ヒ素の量に関して、0.01 mg/L以下 | 33 | 亜鉛及びその化合物 | 亜鉛の量に関して、1.0 mg/L以下 |
| 8 | 六価クロム化合物 | 六価クロムの量に関して、0.02 mg/L以下 | 34 | アルミニウム及びその化合物 | アルミニウムの量に関して、0.2 mg/L以下 |
| 9 | 亜硝酸態窒素 | 0.04 mg/L以下 | 35 | 鉄及びその化合物 | 鉄の量に関して、0.3 mg/L以下 |
| 10 | シアン化物イオン及び塩化シアン | シアンの量に関して、0.01 mg/L以下 | 36 | 銅及びその化合物 | 銅の量に関して、1.0 mg/L以下 |
| 11 | 硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素 | 10 mg/L以下 | 37 | ナトリウム及びその化合物 | ナトリウムの量に関して、200 mg/L以下 |
| 12 | フッ素及びその化合物 | フッ素の量に関して、0.8 mg/L以下 | 38 | マンガン及びその化合物 | マンガンの量に関して、0.05 mg/L以下 |
| 13 | ホウ素及びその化合物 | ホウ素の量に関して、1.0 mg/L以下 | 39 | 塩化物イオン | 200 mg/L以下 |
| 14 | 四塩化炭素 | 0.002 mg/L以下 | 40 | カルシウム、マグネシウム等(硬度) | 300 mg/L以下 |
| 15 | 1, 4-ジオキサン | 0.05 mg/L以下 | 41 | 蒸発残留物 | 500 mg/L以下 |
| 16 | シス-1, 2-ジクロロエチレン及びトランス-1, 2-ジクロロエチレン | 0.04 mg/L以下 | 42 | 陰イオン界面活性剤 | 0.2 mg/L以下 |
| 17 | ジクロロメタン | 0.02 mg/L以下 | 43 | ジェオスミン | 0.00001 mg/L以下 |
| 18 | テトラクロロエチレン | 0.01 mg/L以下 | 44 | 2-メチルイソボルネオール | 0.00001 mg/L以下 |
| 19 | トリクロロエチレン | 0.01 mg/L以下 | 45 | 非イオン界面活性剤 | 0.02 mg/L以下 |
| 20 | ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及び ペルフルオロオクタン酸(PFOA) | 0.00005 mg/L以下 | 46 | フェノール類 | フェノールに換算して、0.005 mg/L以下 |
| 21 | ベンゼン | 0.01 mg/L以下 | 47 | 有機物(全有機炭素(TOC)の量) | 3 mg/L以下 |
| 22 | 塩素酸 | 0.01 mg/L以下 | 48 | pH値 | 5.8以上8.6以下 |
| 23 | クロロ酢酸 | 0.01 mg/L以下 | 49 | 味 | 異常でないこと |
| 24 | クロロホルム | 0.01 mg/L以下 | 50 | 臭気 | 異常でないこと |
| 25 | ジクロロ酢酸 | 0.01 mg/L以下 | 51 | 色度 | 5度以下 |
| 26 | ジブロモクロロメタン | 0.01 mg/L以下 | 52 | 濁度 | 2度以下 |
(参考)水道水質基準等の体系

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水質基準(水道法第4条、省令) 69737_b1bd85-dc> |
水道業者等に順守義務・検査義務あり 69737_e6f931-43> |
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水質管理目標設定項目(局長通知) 69737_dec91d-83> |
水道事業者等が水質基準に準じた検査等の実施に努め水道管理に活用 69737_8ad5db-50> |
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要検討項目(課長通知) 69737_7ff6ef-29> |
毒性評価が定まらない、浄水中存在量が不明等 69737_2bb336-5f> |
■ 水道法改正の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施行日 | 令和8年(2026年)4月1日 |
| 対象物質 | PFOSおよびPFOA(合算評価) |
| 水質基準値 | 合算で 50 ng/L(0.00005 mg/L)以下 |
| 適用範囲 | 上水(浄水)に加え、公共用水域および地下水における指針値としても同値を設定 |
| 検査義務・頻度 | 水道事業者に対し、原則として3か月に1回以上の定期検査を義務付け |
| 根拠 | 健康影響評価(食品安全委員会等)に基づく予防的措置。指針値の恒常的な運用へ移行 |
概要を簡単にご紹介しました。
では、第2回:制度改正の背景とPFOS・PFOAの発生源リスクを正しく理解する
に移っていきましょう。


