技術資料

PFOS・PFOA規制強化対策 | 今こそ備える!水道法改正対応 PFAS分析完全ガイド1

27 Nov 2025

■ 水道法改正の背景

近年、PFAS(Per- and Polyfluoroalkyl Substances:ペルフルオロアルキル化合物類)、特にPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)およびPFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、その高い難分解性、長距離移動性、生体蓄積性により、国内外において重要な環境・公衆衛生上の懸念物質とされています。これらの化合物は、水環境を通じて人の健康へ影響を及ぼす可能性が指摘されており、各国で規制が強化されつつあります。そこで、この制度改正の概要から実務上の対応ポイント、さらに精密なPFAS分析に必要な技術的ソリューションや装置・標準物質の選定基準まで、全4回のシリーズとして詳しく解説していきます。

PFAS分析においては、対象化合物の濃度が極めて低レベル(ng/L〜pptレベル)であることに加え、複雑な水マトリックス中での高精度な分離・定量が求められるため、一般的な有機物分析とは異なる専門的ノウハウが必要とされます。さらに、分析対象そのものが装置や試薬、容器からのコンタミネーション源となり得るという特性を持つため、サンプル採取から分析に至る全工程での厳密な管理(ブランク対策、材料選定、装置構成)が不可欠です。

こうした背景から、今後必要とされるのは、単なる法規制への形式的な対応にとどまらず、科学的根拠に基づくPFASのリスク評価を支える、信頼性の高い分析体制と定量手法の確立です。現場の分析者・研究者・水道事業体の皆様が、制度対応を超えて持続可能な水質管理体制を築く一助となることを目指し、本シリーズをお届けします。

Figure 1: 水質基準項目(52項目)の中に入ったPFOSとPFOA

環境省「水質基準に関する省令改正の概要について」(令和7年8月8日 水道水質・衛生管理室)より)

水質基準項目(52項目)

項目基準項目基準
1一般細菌1 mLの検水で形成される集落数が100以下27臭素酸0.01 mg/L以下
2大腸菌検出されないこと28総トリハロメタン(23, 25, 29, 30総和)0.1 mg/L以下
3カドミウム及びその化合物カドミウムの量に関して、0.003 mg/L以下29トリクロロ酢酸0.03 mg/L以下
4水銀及びその化合物水銀の量に関して、0.0005 mg/L以下30ブロモジクロロメタン0.03 mg/L以下
5セレン及びその化合物レンの量に関して、0.01 mg/L以下31ブロモホルム0.09 mg/L以下
6鉛及びその化合物鉛の量に関して、0.01 mg/L以下32ホルムアルデヒド0.08 mg/L以下
7ヒ素及びその化合物ヒ素の量に関して、0.01 mg/L以下33亜鉛及びその化合物亜鉛の量に関して、1.0 mg/L以下
8六価クロム化合物六価クロムの量に関して、0.02 mg/L以下34アルミニウム及びその化合物アルミニウムの量に関して、0.2 mg/L以下
9亜硝酸態窒素0.04 mg/L以下35鉄及びその化合物鉄の量に関して、0.3 mg/L以下
10シアン化物イオン及び塩化シアンシアンの量に関して、0.01 mg/L以下36銅及びその化合物銅の量に関して、1.0 mg/L以下
11硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素10 mg/L以下37ナトリウム及びその化合物ナトリウムの量に関して、200 mg/L以下
12フッ素及びその化合物フッ素の量に関して、0.8 mg/L以下38マンガン及びその化合物マンガンの量に関して、0.05 mg/L以下
13ホウ素及びその化合物ホウ素の量に関して、1.0 mg/L以下39塩化物イオン200 mg/L以下
14四塩化炭素0.002 mg/L以下40カルシウム、マグネシウム等(硬度)300 mg/L以下
151, 4-ジオキサン0.05 mg/L以下41蒸発残留物500 mg/L以下
16シス-1, 2-ジクロロエチレン及びトランス-1, 2-ジクロロエチレン0.04 mg/L以下42陰イオン界面活性剤0.2 mg/L以下
17ジクロロメタン0.02 mg/L以下43ジェオスミン0.00001 mg/L以下
18テトラクロロエチレン0.01 mg/L以下442-メチルイソボルネオール0.00001 mg/L以下
19トリクロロエチレン0.01 mg/L以下45非イオン界面活性剤0.02 mg/L以下
20ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及び
ペルフルオロオクタン酸(PFOA)
0.00005 mg/L以下46フェノール類フェノールに換算して、0.005 mg/L以下
21ベンゼン0.01 mg/L以下47有機物(全有機炭素(TOC)の量)3 mg/L以下
22塩素酸0.01 mg/L以下48pH値5.8以上8.6以下
23クロロ酢酸0.01 mg/L以下49異常でないこと
24クロロホルム0.01 mg/L以下50臭気異常でないこと
25ジクロロ酢酸0.01 mg/L以下51色度5度以下
26ジブロモクロロメタン0.01 mg/L以下52濁度2度以下
(参考)水道水質基準等の体系

水質基準(水道法第4条、省令)

水道業者等に順守義務・検査義務あり

水質管理目標設定項目(局長通知)

水道事業者等が水質基準に準じた検査等の実施に努め水道管理に活用

要検討項目(課長通知)

毒性評価が定まらない、浄水中存在量が不明等

項目内容
施行日令和8年(2026年)4月1日
対象物質PFOSおよびPFOA(合算評価)
水質基準値合算で 50 ng/L(0.00005 mg/L)以下
適用範囲上水(浄水)に加え、公共用水域および地下水における指針値としても同値を設定
検査義務・頻度水道事業者に対し、原則として3か月に1回以上の定期検査を義務付け
根拠健康影響評価(食品安全委員会等)に基づく予防的措置。指針値の恒常的な運用へ移行
Figure 2: 検査頻度が分かるフローチャート

環境省「水質基準に関する省令改正の概要について」(令和7年8月8日 水道水質・衛生管理室)より)

Figure 2 suzu

概要を簡単にご紹介しました。
では、第2回:制度改正の背景とPFOS・PFOAの発生源リスクを正しく理解する
に移っていきましょう。

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