技術資料

Raptor C18 SPP 5 µm カラム: PFASの迅速で高精度なLC-MS/MSによる分析に最適な選択肢

14 Oct 2020

feature EVAR2397
  • Raptor C18 SPP 5 µm コアシェルシリカパーティクルカラムは、短いサイクルタイムでフッ素化合物を精度よく分離します。
  • EPA Method 537およびISO 25101の要件を満たす分析が可能です。
  • Restek独自の、耐久性の高いRaptor C18カラム設計により、装置の稼働時間が増えます。

PFASは、消火剤、コーティング添加剤、繊維製品、洗浄剤など、さまざまな製品の製造に界面活性剤として使用される人工のフッ素化学物質です。全世界的レベルで大量に使用されてるため、環境中においても多く検出されています。これらのフッ素化学物質は一般的な環境において非常に持続性が高く、ほとんど分解されないため、環境から栄養を摂取する動物や人間などの体内にも見られ、土壌、大気、地下水、都市ごみ、埋め立て地の浸出水にも存在します。特にペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とペルフルオロオクタン酸(PFOA)の毒性、移動性、生物蓄積性は、環境と人間の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。

PFOSやPFOAへの曝露リスクやそれによる有害な影響の可能性があるので、PFOSとPFOAはともに規制の監視下に置かれ、多くの国で使用が制限され、飲料水やその他のマトリックスにおける閾値レベルが設定されています。2013/39/EU指令(水枠組指令の改正)では、PFOSは環境品質基準が非常に厳しい「優先物質」に指定されており、2006/122/ECOF EU指令では、EU域内におけるPFOSの製造と使用を禁止しています。この指令はPFOAもPFOSに匹敵するリスクプロファイルを示すとみなしています。パーフルオロアルキル化合物(PFAS)一般は、現在米国では規制されていませんが、米国環境保護庁(EPA)はPFOSとPFOAに関する健康勧告を発表しており、米国のほとんどの州や市は飲料水中のPFASの存在をモニタリングしています。

パーフルオロアルキル酸の分析は時に困難な場合がありますが、それはこれらの化合物が多くの他の環境汚染物質とは化学的に性質が異なるからです。PFASは他の化合物よりも揮発性が高く、親水性があり、やや反応性が高い傾向があるため、定量が困難です。さらに、フッ素化学物質はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)材料中にも存在するため、正確な分析を行うには、サンプリングおよび分析プロセス(HPLC溶媒注入チューブを含む)全体を通してPTFE製の実験器具を使用しないようにすることが不可欠です。通常、パーフルオロアルキル酸は、EPA Method 537、ISO 25101、DIN 38407-42、ASTM D7979、またはASTM D7968などのLC-MS/MSメソッドで分析されますが、分析時間が長いとサンプルのスループットが大幅に制限されます。これらのメソッドはいずれも分析条件の例を提示しており、標準試料によりますが、分析時間は15~27分の範囲内です。しかし、各メソッドでは分析パラメータの定義やカラムの選択に柔軟性があるため、各ラボにおいてメソッドの要件をできるだけ効率的に満たすように条件を最適化することができます。

表面多孔性充填剤(SPP)カラムを使用することで可能になる高速かつ効率的な分離を利用して、以下に説明するメソッドでは分離が十分な迅速な分析が実現され、特定の保持時間ウィンドウ内のすべての化合物に対して十分なMS dwell timeを確保することができました。Figure 1に示すように、Raptor C18 カラムを使用して、ピーク分離度や選択性を犠牲にすることなく、合計 9 分のサイクルタイムで対象となるすべてのパーフルオロアルキル酸を分析できました。すべての分析対象成分は、MS/MSで正確に同定、解析、定量できる対称性の高いピークとして溶出しました。このメソッドでは、PFHxSおよびPFOSの分岐型の異性体を簡単に分離できているため、直鎖化合物と分岐化合物を合算して報告することが求められる基準(例:EPA Method 537)にも対応していると言えます。

フッ素化合物としてPFOAとPFOSだけを分析対象とする場合、分析条件をさらに最適化できます。Figure 2のクロマトグラムが示すように、2.1 x 100 mmのRaptor C18カラムを使用することで、サイクルタイムの合計が4.5分の迅速な分離(2分未満)が達成できました。また、より短いカラム(2.1 x 50 mm)またはより小さな粒子(例えば、2.7 µm粒子)のカラムを使用すれば、さらに迅速に分析を行うことができます。

LCによるパーフルオロアルキル酸の分析を行うラボが、分析対象成分がより多くリストアップされる分析を行う場合でも、PFOA と PFOS だけにフォーカスする場合でも、ここで達成された優れたピーク形状と分離により、大幅に短縮された分析時間で、一貫性のある正確な定量が可能になります。Raptor C18 カラムに切り替えることで、フッ素化合物に対するメソッドの要件を満たしながらも、ラボで1 時間あたりに処理できるサンプルはより多くなります。

Figure 1: 5 µm Raptor C18 カラムと装置条件を用いた包括的なパーフルオロアルキル酸の分析の分析時間が短縮(ピークリストと分析条件を含む完全版はPDFでダウンロード可)
Perfluorinated Alkyl Acids on Raptor C18 by LC-MS/MS for EPA Method 537

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Figure 2: 迅速な分析(2分未満)でPFOSとPFOAをベースラインまで分離(サイクルタイムの合計が4.5分)(ピークリストと分析条件を含む完全版はPDFでダウンロード可)
Perfluorooctanoic Acid (PFOA) and Perfluorooctanesulfonic Acid (PFOS) on Raptor C18 by LC-MS/MS

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Author

  • Shun-Hsin Liang, PhD

    Shun-Hsin is a senior principal scientist in LC Solutions at Restek. He received his bachelor’s degree from the National Taiwan University in 1988 and obtained his PhD from Michigan State University in 1996. He performed postdoctoral research at the University of Michigan from 1996 to 2000 for oncology studies. In 2001, he was appointed as research faculty at The Pennsylvania State University and focused on molecular toxicology research. In 2006, he joined MPI Research Inc. as a senior research scientist and was a study director for GLP analytical projects. In 2013, Dr. Liang joined the LC Solutions department at Restek and specialized in developing application methods across the fields of environmental, food safety, and life sciences.

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